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●<その2ですよ!

 猛烈な空腹感に無理やり意識を覚醒されて、昨日は晩飯も風呂も全部すっ飛ばしてしまった事に気がついた。おまけに服も着替えてないわ課題もやってないときたもんで、今日一日が最低な日になることが早速決定されてしまった。
「サイテーすぎる」
 律儀にアラーム音を奏でてくれる携帯を操作しつつ、起き上がる。
 やれやれと口をついて出た言葉は俺の今の心境を的確に表していて、そのサイテーの源はというと、
「だ、だめよ……まだダシが……むにゃむにゃ」
 季節はサツキだというのにお春真っ盛りの笑顔の寝顔で、どんな夢見てるんだコイツとお脳の中身を心配させるような寝言を呟いていた。

 ――ベッドの中の俺の隣で。

 きゃあいやーん! とはこういう場合男の台詞としてどうなんだと自分でも思うが、とにもかくにも朝で元気な息子さんを手で庇った俺は、
「何で夢じゃないんだよ!」
 最後の最後の儚い希望を打ち砕かれた悲しみが怒りへと転じ、本人いわくりょーこをころころ転がしベッドから追放してやった。
 あんな奇想天外の枠を飛び越えた出会いをしなければ淡い恋の一つでも感じたかもしれない端整な顔立ちは、立派な眉毛を痛みに顰め、
「こんぶっ!」
 どすんむぎゅ。 
 打ち所が良かったのか手足をピクピクさせ出した。
 流石にやり過ぎたかな……という心配は「ぐーすかぴー」という冗談のような寝息が杞憂に終わらせてくれて、だがしかしこれだけして目を覚まさないのもある意味どうなんだという新たな心配を一つ増やしてくれたというか、もう俺も自分で何を言っているのかよく分からない。
 つまりこうやって混乱するくらいに昨日の出来事は奇妙奇天烈だったのだ。
 鼻ちょうちんをこさえた少しだけ悪戯したくなる寝顔を見つめ、
「……マジ、どうすんだよ、これ」
「すかぴー」
 朝っぱらから俺は盛大にため息を吐き出した。
 精霊とか何とか言っていたような記憶があるが、普通信じられるかそんなもんな自己紹介も、人語を操る食物もといおでんを見て食ってしまっては鼻で笑って否定することも出来ず。
 五十歩ほど譲って精霊だと認めて、けど認めて何が如何なるというワケでもなく。
 シンプルに一人の身元不明の女の子として警察に突き出して解決するような問題とも思えず。
「き、きんた……じゃなくて……きん、ちゃく……」
「……」
 今現在分かっていることと言えば、こいつがアホの子で、おでん大好きで、悔しいがちょっと可愛くて、隣で寝ていたのは俺があのおでんを食ってしまったからだということ。
 そして、
「顔が油っぽいな……」
 俺がとりあえずシャワー浴びて制服着がえてトイレに行きたいということだった。

 ………………
 …………
 ……

 びばのんのサッパリぶるるっとそれらを終えて、さて部屋に戻ってあいつを叩き起こしてこれからどーすんだと大論弁大会開催と行きたかったのだが、近所でも評判の勤勉真面目学生である俺は今日も学校に行かねばならず、そうなるともう適当に飯食って家を出ないといけない時間であった。
「キョンくーん、早くしないと遅れるよー」
「おーう」
 食卓に座った歳の割りに子供っぽ過ぎていろいろ大丈夫なのかな、と俺を心配させてやまない姉に返事を返しつつ、その姉が用意してくれたトーストにバターを塗りたくる。
 がぶっと齧り口に咥えてさぁ登校――なんて古いアニメのようなことはせず、コーヒー片手に普通に平らげた。目玉焼きやサラダの類が無いのはご愛嬌で、朝食はそれで終了だ。人並みな朝食は美代子さんが作りに来てくれる日しか食すことは出来ない。
「ごちそーさん」
「はーい。おそまつさま」
 本当におそまつでござるとは言えない俺も料理なんて出来るはずがなく、一体全体うちの両親は何を考えて揃って長い事家を空けるなんてことしてくれているんだろうか。
 大の男が単身赴任くらいで死ぬワケがないだろうに、と心中で愚痴をこぼしたところでタイムリミットである。
 部屋に戻った俺は両方の穴から鼻ちょうちんをこさえている物体を極力視界に入れないように苦労しながら時間割を済ませ、カバンを引っ掴んだ。課題は……まぁなんとかなるだろう。
「行って来ます」
「いってらっしゃーい」 
 午前は休講な満面の笑顔に送り出され、憎いくらいの晴天の下へと繰り出した。 
 最近チェーンがへたってきたチャリに跨り、さぁこのままレッツゴーといけたらどんだけ楽かとつくづく思うのだが、悲しいかな嬉しいかな、毎朝荷台にはちょいとした荷物を乗せねばならぬのである。
 その荷物を受け取るためお隣さんのチャイムをピンポーンと押して数秒で、インターホンから艶かしい返事が返ってきた。
「おはよう、キョンくん。毎朝ありがとうね」
「おはようございます、みちるさん。ええと、お礼を言われるようなことじゃないですよ」
「うふふ。ありがと。今着替えてるところだから、もう少し待ってあげてね」
「了解です」
 このお声が聞けるから毎朝頑張れているんだろうね。
 というぐらいに俺の耳をやさしく慈しみ癒してくれるボイスがこの後、
「みくる! モタモタしてキョンくん待たせるんじゃないの! さっさとしなさいこのボケ!」
 難波の金融王もかくやというぐらいに恐ろしいモノに変貌することになるのだが、その声を発している時のお顔を思い出したくないので故意にスルーである。
 風のうわさでは「泣く子も殴る悪鬼羅刹」とかいう二つ名のレディースヘッドだったらしいのだが、……それを否定して良いものか納得して良いものかと悩んでいると、
「お、おはよう、キョンくん」
「おっす、みくる」
 見た目だけは色んな意味でお姉さんと瓜二つの幼馴染が、朝っぱらから名前が赤く表示されてるくらいに瀕死な様子でよちよち歩いてきた。
 家事も勉強もそこそこ出来るというのに如何せんどんくさいこいつは、勿論体育は万年イチで、こうして毎朝お姉さんに本気でケツを蹴っ飛ばされないとブッちぎりで遅刻してしまうのである。
 しかも、だ。
「ごめんね毎日毎日……練習してるんだけど」
「気にするなって。その代わりにってみちるさんに弁当作ってもらってるし」
「それもほんとはあたしが作らないといけないのに……うぅぅ」
 景気が悪そうな顔でめそめそ俺のチャリの荷台に腰掛けるこいつは、何を隠そう高校生になっていまだに自転車に乗ることが出来ない。
 冗談と笑うやつが居たら朝比奈邸のガレージを見てみると良いぞ。補助輪がついた大人用自転車という非常に珍しいものを見ることが出来るからな。
 そんなワケで俺は毎朝みくるをケツに乗っけてチャリ登校するという苦行を強いられているのだが、主に辛いのは足回りだけでお楽しみもある――とか何とか意識すると前かがみになってしまうので、今のうちに丹田に気合を集中させておこう。
「忘れものないか?」
「ううん。大丈夫。キョンくんこそ、大丈夫?」
「いろいろあって課題をやってない」
「そうな……え、えぇー!?」
 めそめそ一転「だめじゃないのもう」とぷりぷり怒る姿を見ていると谷口が俺に本気でぶち切れる理由にも納得だが、
「写させてくれるよな? な?」
 ノーと言ったら盛大に遅刻してもらうぜ。
「うぅぅ……みなさーん、悪い男がここにいますぅ……」
 ぷりぷり一転まためそめそしだしたみくるにしっかり捕まってろよ、と声をかけていざ出発である。良かった良かった何とかなった。
「もっとしっかり捕まっとけよ!」
「う、うん、や、ちょ、キョンく、はや、ひゃー!」
 腹に回された腕にきゅっと力が篭って背中に凶悪な弾力を感じた瞬間に、丹田の気合が跡形もなく吹き飛んで、最初からトップスピードで漕ぎ出さないとどうにかなってしまいそう――なのは言うまでもないな。

 ………………
 …………
 ……

 今日の弁当のおかずはなんだろうな。全体的に洋風にしてみたって言ってたよ。ほうそりゃ楽しみだ。
 なんて他愛無いにもほどがある会話を交わしつつ、チャリ漕ぎというスポーツのはしくれで煩悩を退散させていると、あと地獄坂までもう半分といったところで国産車では醸し出せない独特の重低サウンドが背後から近づいてきた。
 古いアメリカの大統領の名前を冠する高級車は上品に聞こえるのは俺の耳が貧乏だからだろうね、という小さめなクラクションを一つ鳴らし、いったい幾らほどの値段差があるか想像もつかないチャリを追い抜くくと十メートルほど前方で停車する。
 パワーウィンドウが開ききるタイミングでその横に到達し、同じく停車して、
「二人とも今朝もラブラブ登校なんだねーいいねいいねーやけるねぇ」
 にょろっと顔を出したクラスメイトは毎度元気に聞き捨てならないことを言う。
「おはよう、鶴屋」
「おはようございます、鶴屋さん」
「おいっすー! 二人とも元気? わたし? わたしは今日もめがっさ元気だよっ」
 それだけ元気なら俺たちのような庶民を見習って自転車通学しやがれ。
 それとだな、というかコレが毎回の俺が言いくて堪らない台詞なんだが、
「ラブラブなぞしとらん。……と突っ込むのももう疲れたから、次からはスルーするからな」
 なぜか背後からとほほと遣り切れないといった気配を感じ、どういうわけか停車しているというのに胴に回された腕がきゅっと力を込めた。
 それを目ざとく観察していたにょろにょろ娘は天晴れとさわやかに笑い、
「あははっ。みくるは素直なのに素直じゃないねー。それじゃわたしは先に行ってるから、二人とも遅刻するんじゃないにょろよっ!」
 にょろよーにょろよーにょろよー、とやけに耳につくエコーを残しながら軽やかに去って行った。
 エンジン音より耳に残るだなんてどういう声帯をしているんだろうかとくだらない事を考えつつ、発車する前から準備万端な幼馴染に一声かけてから、こちらも出発である。
「……」
「……」
 で。
 なぜか無言である。タイヤが回転する澄んだ音が響くばかりで、何も会話が無い。
 そりゃ二人ともあまりべらべらお喋りするタイプじゃないが、……分かってるさ、なぜかだなんて言ったが、毎度ああも直球にラブラブだの夫婦だのバカップルだのからかわれては意識するなと言われるのが無理な話で、つまり気恥ずかしくって口を開くことが出来ないのだ。
 顔を合わせていないのに体は密着という妙なシチュも影響しているのかな、なんて酸素消費の増大以外の理由で心臓の鼓動をちょいとばかし早くさせながら、結局決まって先に口を開くのは俺の方なのだった。
「みくる。……みくる?」
「あ、な、なに? どうしたの?」
「お前さ、あーいう登校どう思うよ?」
 それが鶴屋のことを指しているんだという事に気づくのに暫くかかったようで、若干の間を置いて、
「……ちょっと羨ましい、かな。車ならキョンくんも疲れないし」
 えへへ、ごめんね。としょんぼりした声でみくるは締めくくった。
 やれやれとは声に出さずに呟いて、俺は鼻から息を出し体の力を抜き、アホ、と前置きをする。
「どんだけお前をケツに乗っけて走ったと思ってるんだよ。やれ学校だやれお遣いだ。最初はバテバテだったけどな、今じゃ競輪選手を目指すのも良いかなってぐらいには楽勝だぜ」
 それになにより。
「……あんな高級車に乗ったら緊張で余計疲れる」
 俺の言葉にみくるは暫く呆気にとられたようで、捕まる腕の力がふわっと緩んだ。
 そのままずるずると落ちてしまいそうな気配を感じた俺は自転車を慌てて停めて、
「みくる?」
 そう声をかけて後ろを振り向こうとしたところで、再び腕に力が込められた。
 すんすんと鼻をすする音が聞こえて、何なんだよといぶかしむ。やれやれと今度は声に出して漕ぎ出そうとしたところで、みくるが調子を取り戻した。
「あたしもきっと緊張しちゃう」
「だろ」
 鶴屋は金持ちを鼻にかけない良いやつだが、やっぱりどこかがちょっとずれている。逆玉の輿に憧れんでもないが、もしそうなったとしたら息苦しさにすぐにまいってしまうだろうな。
 だからだ。
「俺にはママチャリで、お前はその荷台がお似合いだよ。……なんか時間くったな、さっさと行こうぜ」
 うんっ、と答える声はやたらめったら元気で、今まで以上に押し付けられた卑怯な弾力に俺は脳内をパステルピンク一色に染めながら、心の何処かで思うのだった。幼馴染じゃなかったらこんなヤツと二人乗りなんて夢のまた夢だったんだろうなと。

 ………………
 …………
 ……

 坂の麓まで来て、どっこらしょっとときたもんだ。
 流石に二人乗りでこの坂を駆け上るのは朝からハードワークにもほどがり、ワーカーホリックでも何でもない俺はみくるを下ろし、チャリを手で押しながらえっちらほっちら徒歩で上る。
 煩悩退散全速前進の割りにはあまり疲れてないわれながらたくましい足腰を少し誇らしく思いつつ、本気を出した蝸牛と良い勝負なみくるの歩調に合わせてのほほんとしていると、
「やぁやぁ二人とも久しぶりだねっ」
 時速数倍の速さで先行したはずのにょろっ子がなぜか後ろからやって来た。
「突っ込んでやらねーぞ」
「鶴屋さん、おひさしぶりです」
 律儀なみくるを再び目ざとく観察すると、にんまりといやらしい笑みを浮かべ、
「キョンくんにしては上出来だねっ」
 どういうワケか俺の肩をばんばんとたたいてきやがった。
 何なんだよおい。
「ふひひ。なんなんだろうねー? ね、みくる?」
「えぇ? う、うーん……じょ、上出来かな」
 口元に指を当てて考えるような仕草をする癖に同調しやがる。何故窺うように俺の顔を見るのか。
 本当に一体全体何なんだよおいおい。
 二人はすっかり意気投合したのか顔を見合わせてうふふえへへと風にそよぐ白つめ草のように笑い合い、
「それが分かっちゃったらキョンくんじゃなくなっちゃうから」
「そういうことだねっ」
「なんだそりゃ……」
 やれやれと肩を竦める俺を見て鶴屋は「いつものでたー!」と何故か喜びはしゃぎ、みくるはうふふと上機嫌に微笑んでいる。
 何がなんだか分からないが、二人が楽しそうなので別に良いかと思う俺は案外フェミニストなのかもしれないと、後で思い返して自分のキャラじゃねーよな薄気味悪くなるようなことを考えていた所為だろうか。
 アホの谷口がさっきから恨めしそうな視線でこちらを睨んでいるのを発見して、一匹の雄として勝利した笑みを向けてやろうと振り返ったところで、
「おはようございます、みなさん」
「顔近っ!」
 何時の間にか背後に忍び寄っていたそいつに気づかず、満面のドアップといきなりご対面した俺は数センチほど地上から浮いて後退った。とっぴな叫び声でさえ中々恥ずかしいというのに、余分な恥ずかしさまで追加されて柄にもなく慌てふためいてしまったのだ。
 それくらいに俺にドアップをかましてくれやがったコイツは、
「すみません。驚かせてしまったようですね。……ですが、そこまでされると少々こちらも傷つくというものです」
「すまん。……あー、なんだ。古泉、おはよう」
「あ、おはよう。いつきちゃん」
「おっはよー!」
「えぇ。改めましてみなさんおはようございます。今日は見事な五月晴れですね。こういう日は賑やかに登校したいと思うのですが、よろしかったら仲間に入れていただけませんか」 
 同い年だというのにやたら丁寧な言葉を遣い、勉強運動パーフェクトな上に委員長まで務め上げていて、如何なる時も終始微笑みを絶やさないこいつは、
「別に構わないぞ。つうか、んなもん断らんでもいいだろ。好きにしろ」
「そうですよ。お友達じゃないですか」
「うんうん。みくるの言うとおりさね。キョンくんの他の男子からの恨みを考えるとごめんなんだけど、あたし友情って素敵だと思うんだよねっ!」
 鶴屋にそういう台詞を吐かせるくらいに、ちなみに谷口的評価AAプラスくらいに、そこいらのやつらとは比べるのが酷というもんだという顔立ちをしているのである。
 ぶっちゃけて顔が近づいただけで俺がどきっとするくらいに美少女なのである。
「ありがとうございます。それではお言葉に甘えまして」
「言葉以外に甘えたらみくるが泣いちゃうから気をつけてねっ」
「わーわー、何言ってるんですかっ」
「はい。心得ていますよ」
「何故俺を見る?」
「さぁ、何故でしょうか」
「キョンくんは知らなくていいのっ」
「もーおー! 二人ともー!」
 温和な性格で友達も多く、みくると鶴屋とはその中でも特に仲が宜しいらしくこうしてときたま一緒になるのだが、さてこうも女が多いと肩身が狭い。
 二人に弄られだしたみくるを何時もの事だと放置して、ここいらで谷口の無謀という名前の勇気を頼りにして「こっち来いよ」と念を視線に込めてみるのだが、
「――――」
 口の動きだけで「マジコロス」と返された。放送するにはモザイク必須な顔を隣に居た国木田がまぁまぁと窘めているが、お前もこっちに来てくれない時点で俺的友情ランクはガタ落ちだぞこのやろう。
「はぁ」
 友情ってそんなに素敵じゃないと思うぜ鶴屋と心中で愚痴りつつ、ため息ひとつ。
 しょうがなく視線を三人よれば姦しいを体言してやまない方に向けるが、すっかり女同士の会話に夢中で俺は蚊帳の外のである。参加しろと言われても困るし、参加する度胸も意思もないのだが。
 ……まぁ目の保養にはなるか。
 そんな悲しい結論を下して傍観者に徹する俺の頭の中からは、このときおでんの精霊のことなんぞすっぽり抜け落ちていて、その事を後悔するのはもうちょっと後の話になるな。
 もう少しあの鼻ちょうちん娘のことを真剣に悩んでいれば、――あんなことにはならなかったのに。

 自分のモノローグにあえて突っ込ませてもらおう。いったいどうなるんだよ、俺。
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by kyon-haru | 2005-05-22 00:57

ODEN

 涼宮ハルヒの1と2分の1創作アットおでん風味。
 つまりいつもの悪い癖だ。ハルヒという箱庭で筆者が好き勝手するお話。

 本編
「Eat me Eat me」
「Wonderful Friendship」
「Madendish is a Ponytail」
「Milktaste First Kiss」
「Opportune Daring Error Narrative 1」
「Opportune Daring Error Narrative 2」

 番外編
「げこげーこ・すぺくたくる 1」
「げこげーこ・すぺくたくる 2」
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by kyon-haru | 2005-05-19 21:59 | ODEN

ころっけゆかい


 がばがばにへたった親父のブリーフのごとく疲れて帰宅して風呂はいって、夕飯の時。
 ビールのつまみにと妻が用意してくれたコロッケをがぶっと一齧りするやいなや、その妻は恒星が爆発したような笑顔で、
「どう? それおいしいでしょ」
「ん。そうだな、いつものやつより……こう、ジューシーつうかなんつうか」 
 じゃがいもと牛肉が相当上等なやつだってことにはすぐ気がついたが、よく咀嚼してみればこれは衣からしていつものやつと違うな。
「うん。うまいわ」
 最初の一口を飲み込んでからそう答える。
 確かに旨い。それもかなり。どれ、もう一口。
 コロッケにがっつく俺を見つめつつ、妻は爆発のエネルギーで回りの星々を蒸発させるがごとき勢いで、
「でっしょー? 井上のおば様に教えてもらったお肉屋さんで買ってきたんだけどね、もう行列がすごいのなんの。たかがコロッケにこいつらアホじゃないの? ってあたしも並んでいる最中は思ってたんだけど、実際食べてみると行列してでも手に入れたいって気持ちに納得の共感よ! しかもこれで一つ六十円なのよ? 原価考えたらそんなに上等な素材を使ってるわけじゃないのに、この味はもう料理という名のマジックね」
 うむうむと腕組みしながら肉のはーるまんをベタ褒めする。
 その店名は何の冗談だと思いつつも、店主の凄腕には俺も素直に驚いた。
「ほー。別に良い肉使ってるわけじゃないのか。そりゃすごい」
「ま、料理と言ってもパンをトースターに入れるくらいしか出来ないあんたにはそのすごさがどれくらいかは分からないでしょうけどね」
「そりゃごもっとも」
 ふふふん、と何故か勝ち誇った笑みを浮かべるうちの妻。
 今度の休みはこいつが起きる前に米炊いて味噌汁と目玉焼きを作って驚かしてやると密かに決意しつつ、コロッケに添えられた野菜炒めにも箸を伸ばす。
「これも、……いや、やっぱいいわ」
「何よ? 途中まで言いかけて止めないでよ、気になるじゃない」 
「なんでもねぇよ」
 ぶぅー、と今しがたまでの笑顔をふくれっ面にしてしまった妻には申し訳ないが、
 俺が言いたかったことは「これでもどこかで買ってきたのか?」であり、その答えは見た目と匂いがすでに答えをくれてしまっていた。
 さらに一口放り込んで、味で確信する。
 ……うん、これは惣菜じゃなくてお手製だ。
 それをむしゃむしゃごっくん、と漫画的擬音で形容するとしっくりくる勢いで平らげていく。
「あたしもさぁ、料理にはちょっと自信あったけど、やっぱり世界は広いんだなーって再確認したわ。しかもその世界がご近所の商店街に住んでる見た目は普通のおっちゃんに広げられてるのよ? どれだけ広いのよ! って突っ込みいれたくなるわ。……こんな感じにたまに突っ込みいれたくなるのってさ、どう考えてもあんたの影響よね。学生ん時から突っ込み役だったもんねー、あんた」
 笑顔かと思ったらふくれっ面で、ふくれっ面かと思ったら笑顔で。
 ころころと表情を変化させながら女はたわいないおしゃべりが好きを地で行くわが妻に適当に相槌をうちつつ、野菜炒めを食べ終わり、残りのコロッケをビールで流し込む。
「ふぅ。うまかったわ」
「でっしょ? また買ってくるわ」
 ビールの缶とコップ、皿を片しつつ妻が立ち上がる。
 ご飯のおかずもそのコロッケなんだけどねー、などと言いながら揺れる後姿に、
「いやコロッケもそうだけどさ、やっぱりお前の料理、うまいなって」
 本音を言えばどこぞのおっちゃんが作ったコロッケより野菜炒めのほうが俺の好みの味付けで、気持ち的に感じる美味さは上だったのだが、そこまではっきり言える俺じゃない。
 妻はがたたっとバランスを崩しつつ「あったり前でしょ!」と、確実に照れているだろう顔が見えないように叫んでいて、こんな可愛い妻に行列を並ぶ苦労をして欲しくないなと思い、
「そうだな。俺にとってお前の料理が世界一美味いのは当たり前だよな」
 今しがたの自己分析はどこへやらと、そこまではっきり言ってしまった俺はなかなかの愛妻家じゃないだろうか。そうだろう? そうだとも。
 それなのに、
「馬鹿! アホ! すけこまし!」
 がたんと置かれた白飯大盛りの茶碗の隣の皿には、コロッケ抜きのキャベツ山盛りがあるだけだった。
「……」
 うむ。どうやら愛妻家の称号を返上する覚悟がいるようだ。
 酔いの助けも借りてその覚悟をコンマ五秒で決めた俺は、
 
「コロッケよこせー! ここに隠してるのは分かってるんだ!」
「きゃあ! ちょ、どこ触ってんのよあんた!」
 
 肉屋のおっちゃんにちょいとばかし感謝しつつ、ルパンダイヴをかますのだった。
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by kyon-haru | 2005-05-18 01:36

かぷかぷゆかい


「みくるちゃんはあんたに視姦されるためにメイド服着てるんじゃないって言ってるでしょうが!」
「そんなやましいことは絶対にしてない!」
 そんな感じで今日も今日とて一方的な因縁をつけられた挙句ネクタイを引っ張られる。
 なんつう膂力だ、なんて関心する俺じゃない。苦しいつうのいてえつうの。
 だがしかしそう言って止めてくれるハルヒである筈がないので、
「いい加減にしろこのやろう!」
 俺は反撃に出ることにした。
「きゃ、ちょ、ちょっと何すんのよ!」
「うるせえ。いつもいつも気軽にネクタイ引っ張りやがって。気道が閉まるってのはかなりつらいんだぞ」
 引っ張れる力に反発するのではなく、むしろその力に身を任せることでハルヒに接近。
 そして二の腕を外側から押さえ込むように背中に両腕を回して、逆に俺の方に引き寄せてやった。
 ふふふ。これでネクタイを引っ張ることも殴ることもできはしまい。
 現にハルヒは俺の腕の中で抵抗するでもなく、攻撃の手を封じ込められた事に羞恥して顔を赤くしている。
――そう思っていたのだが、
「がぶ!」
「いてぇ! 吸血鬼かお前!」
 その赤い顔が首筋に近づいたやいなや、あろうことかコイツ首筋に噛み付きやがった。
 さすがに血が出るほどの力強さはなかったが、こいつのことだ。何時頚動脈を噛み切るか分かったもんじゃない。
 だから俺は再び反撃に出ることにした。
「こちょこちょこちょ」
「きゃっ! やっ、ばかっ、ちょ、くすぐった、いや、あは、あっ、あははっ!」
 ハルヒの二の腕を拘束したまま己の前腕だけを動かし、手先をわき腹に持っていってすぐってやる。
 俺の目論見どおりたまらずハルヒは首筋から口を離すことになり、俺の腕の中でもじもじあたふたしながらきゃっきゃっと馬鹿笑い。
 ……ほほう。どうやらくすぐったがりらしいぞ、こいつ。
「そーらこちょこちょこちょ」
 というわけでだな、ここぞとばかりに思う存分くすぐりまくってやる俺だ。
 ハルヒは「あはっ、やめっ、ないと、しけい、なはっ、あははっ」などと嫌々ってな感じに頭を揺らし、眦に涙を貯めて苦しんでいる。
 そんな姿に「いい気味だ」と思ってしまった所為だろう。
 気がつけばどうやら俺はやりすぎてしまっていたらしく、
「……ハルヒ?」
「――」
 競歩の大会の最中に誘導ミスされた陸上選手のように息も絶え絶えな状態から返事があるはずもなく、ハルヒは上気した顔で口をだらしなく開き、ふぅふぅ湿った息を荒いリズムで吐いている。
 笑い死んだ人間が居るかどうか俺の知るところではないが、もしそういう因果で死にいたる人が居るならば目の前のハルヒはそれの一歩手前といった様子だ。
 さて、どうするか。こいつが元気を取り戻して復讐に来る前に逃げ出すかいっそのことトドメを刺してしまおうか。そんな馬鹿なことを真面目に考えていた所為だと思いたい。
 眦の涙を少しばかり溢れさせたとろんとした瞳が力なく俺に焦点をあわせたや否や、
「かぷ」
「ひゃう」
 再び首筋に噛み付かれて、いや甘噛みされて、そんななっさけない妙な声をあげてしまったのは。
「かぷー」
「うおっほん」
 わざとらしい咳払いを一つ。気を取り直す。
 こんな状態でも反撃に打って出るハルヒの根性に驚きつつも、頭部の重量以外の力が加わっていないそれは痛いどころかもごもご吐き出される吐息が熱くてくすぐったくて。 
 けれど目をやれば茫洋としているくせに「かぷかぷー」と必死な表情のハルヒ。
 ……あぁ、分かっているともさ。
 負けた、負けたよ色んな意味で。降参降参降参です。
 腕を緩めてその気力と気合を褒め称えるように背中をぽんぽんとしてやりながら、
「俺の負けだよハルヒ。こーさんだ。だからほれ、ばっちいから口はなせって」
「うぅぅ……ばかー……あほー」
 だがハルヒはもう噛み付きで全体力を使い果たしたらしく、ぐったりと俺に体を預けて高熱を患った病人のような口調という有様だ。
 まったくほんとにやれやれ、だ。
 どうしたもんか、これ。
 心中で苦笑しつつやりすぎたことに謝罪している俺に、今まで俺たち二人のやりとりをずーっと眺めていた三人からやぶから棒に声がかけられた。
 
「別の宇宙でやって」
「別の時間でやってください」
「別の空間でやってくださいませんか?」
 
 ……えーと、なんで皆さんそんな般若みたいな顔してるんですか?
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by kyon-haru | 2005-05-18 01:32

キョンとハルヒ

 キョンとハルヒなお話のまとめです。
 我らのキョン太郎さんが一言コメントつけています。

「プロローグ」
 はじまり、はじまり。
「蚊取り線香をくれないか」
 高校時代その1。もしそうだとしても服に隠れる場所にするくらいの知性は持ってると思いたい。
「イン、マイ、プレイス」
 高校時代その2。いつか生まれる俺の子供はいったいどこの誰のことを夢に見るんだろうね。
「かぷかぷゆかい」
 高校時代その3。その歯型どうしたんだと谷口に聞かれて猛犬だと答えどつかれた。
「すっぱいこばなし」
 高校時代その4。ゴリラと言ったが俺はチンパン君に近いかもしれない。
「初夏、麦わら、お日様の下で」
 高校時代その5。家に帰った後輪ゴムを飛ばす練習をしていたら妹に笑われた。
「夕凪プロミス」
 大学時代。風呂が狭いことに感謝したのは生まれて初めてだったな。
「ブレイクスルー倦怠期」
 夫婦時代。翌日の朝お隣の奥さんにニヤニヤされて我が家の壁が薄いことを再確認した。
「ころっけゆかい」
 夫婦時代その2。メロンは食後にすべきだったなと言ってどつかれた。
「エピローグ」
 おしまい、じゃない。
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by kyon-haru | 2005-05-18 01:31 | キョンハル

おわり、じゃない。


「待たせたな!」
「元気に言ってもダメだから。……遅い、罰金!」
「久しぶりに聞いたなそれー。何十年ぶりだ」
「うーん。結婚しても外で待ち合わせとかやったしね……うむむ」
「いや、真面目に思い出してくれなくても良いから。それに今回ばかしは遅刻したことを褒めて欲しいね」
「そうね。約束だったもんね……あたしより先にいかないで、って」
「だから後追いなんかこれっぽっちも考えなかった俺を褒めろ」
「少しくらいは考えなさいよね……。まぁそんなことしたら現実に蹴り帰してやったけど」
「そうだろ? それにな、五十年以上乗かってた錘が無くなって、あーこの歳でやっと伸び伸びできる、」
「……」
「ワケないだろ? そんな顔するなよ。悪かったって、ほら」
「幾つになってもバカなんだから……もっと強くして」
「分かった。これくらいか?」
「うん。ちょっと苦しいけど、これくらいが良い」
「そうか……。で、だな。……毎日がさ、色が無くなったみたいに退屈だった。でもあの子たちに心配させるのも忍びないからな……指が動いて頭が働くうちに本書いてたんで遅くなった」
「……耄碌?」
「まったくしてなかったどうかは自信ないけど。……なんだよ、俺が本書いたらおかしいのか」
「おかしすぎるわよ。インテリのイの字もないくせに」
「本つっても自伝みたいなもんだよ。大分書きたまったところでな、見せてくれってせがまれて、これは面白いってんで何時の間にか本になることになってた」
「自伝ねぇ。大して珍しい仕事してたワケでもないのに、またなんでそんなもん書こうと思ったのよ」
「普通のサラリーマンの凄さが分からないヤツだな。それよりお前は重要なことを忘れてるぞ」
「んー? あ、あぁー! あんたまさか高校の頃の事書いたんじゃないでしょうね!」
「そのまさかしかないだろ」
「あたしの事も書いたんでしょ!」
「寧ろお前がメインみたいなもんだ。タイトルだって涼宮ハルヒの暴走とか憤慨とかそんなのだし」
「レバッ!」
「いだ! 何しやがる!」
「あんたね……あたしには肖像権や名誉を守る権利があるんだから! ……ちゃんと学校の誰もが羨む完璧美少女だとかそういう風に書いたんでしょうね」
「……耄碌?」
「地獄行きたい?」
「ごめんなさい」
「はぁぁぁ。……まぁ、良いわよ。よかないけど良いってことにしておいてあげるわよ。後から思い返したら自分でもちょっとパワフルな女の子だったと思ってたし」
「ちょっとだぁ――いや、何でもない。……あー、最初の自己紹介のアレとか中々好評だったぞ?」
「うぐっ」
「いす」
「しりとりちゃうわ! あーあーあーもう! そういうあたしだからこそ楽しかった人生とはいえ……あぁんもう! あんたが悪い!」
「そうだな……いつも俺が悪かった。お前は良い子だよ。明るくて、元気があって、とっても良い子だ」
「このまま誤魔化されたいと思ってしまう自分が憎いわー!」
「本当に元気だな……なぁ、そんなことより何で俺たち若い頃の体なんだ? 服も高校の制服だし、喋り方とか考え方も若返ってる。いやー懐かしいなぁ、これ」
「そんなことって何よ……。うーん、大方この頃の姿がお互い心に強く焼き付いてるとかそんなんじゃないの?」
「そうだな……。いや、うん、そうに違いない。この頃のお前が一番お前らしいって思う」
「でっしょ? それによぼよぼより若い方が良いに決まってるじゃないの。理由なんてどうでも良いわ」
「ちげぇねぇ」
「あ、今のちょっとじじ臭いわね。やーいこのじじい!」
「お昼ごはんはまだかいのう……?」
「大丈夫よ、ここって何か知らないけどお腹空いたり眠くなったりしないし」
「ボケ損かよ!」
「あんたがボケてんのは生まれつきでしょーが。んなことより、そういうワケだから暇なのよねー」
「……」
「なんでそれでぎゅーってするワケ?」
「いや、そんな退屈なとこで長い事待たせて申し訳ないな、と」
「……うん」
「これからはずっと一緒だから」
「うん。……退屈させないでよね? 退屈させたらまたあのデッカイの出しちゃうんだから」
「それは困るな」
「バカねー。ヘンテコリンな力はずいぶん前に無くちゃったんだから、出るわけないでしょ」
「それでもだな、お前が退屈してると俺は困る」
「何でよ?」
「退屈なお前は非常に機嫌が悪いからな……いったい何回こづかい無しにされたことか」
「えーと、五十回くらい?」
「別れよう」
「えぐっ」
「やり直そう」
「しゃーないわね、どうしてもって言うんなら別に良いけど?」
「どうしてもお前が良い。お前以外考えられない。俺にはお前しかいない」
「……台詞だけ聞いてると悪い男にひっかけられてるみたいなんだけど」
「愛してる! 愛してるから、百二十円貸してくれ! 缶コーヒーも買えないとかどんだけ!」
「結婚詐欺が無くならない理由が良く分かったわー!」
「はははっ」
「あはっ、もー何時までたってもバカね、ほんと」
「自覚してるさ。バカだからお前みたいな女に惚れちまったんだ」
「あたしもバカだからあんたみたいな男に惚れたのかしら」
「こんなバカ二人でも幸せになれるんだから、世の中捨てたもんじゃないよな」
「そうかもね……。楽しいこと沢山あったわね。……ねぇ、覚えてる?」
「ん?」
「最初の楽しい事は……そう、あんたに言われて部活を作ろうと思った日」
「あぁ。よく覚えてるさ」
「あ、でもその前にあんたが髪型に気がついたりとか色々あったわよね。中学のときの七夕の日に校庭に、」
「ハルヒ」
「あによ、邪魔しないでよ」
「ずっと一緒だから。時間も多分沢山あるし……ゆっくり、全部話せば良いさ」
「それもそうね……たまには良いこと言うわね、キョン」
「そういや、結婚してからもずっとその渾名だったな、俺」
「あんた何年あたしがそう呼んでたかって……もう! 話をずらすな! とりあえず七夕の日からよ!」
「はいはい。分かった分かった」

 ――やれやれと。
 俺は肩をすくめつつ、真夏の太陽よりなお燦燦と輝く笑顔の眩しさに目を細めた。
 五十年以上一緒に居たというのに話題は何時までも尽きることなく、ずっとずっと俺たちはそうやって。
 ずっと――それにきっと、たとえ生まれ変わったとしても。

「運命かねえ……」
「何か言った?」
「お前が居て良かったって」
「当ったり前のこと言われても困るんだけど」
「当たり前か。……そうだな、当たり前だよな」

 だから、おわりじゃない。
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by kyon-haru | 2005-05-18 01:27

なにこれ!

 僕は古泉!
 朝おきたらチンコが五本に増えていた!
 
「バナナみたいですね」
 まさにバナナみたいです。
 とりあえず左端から
 お父さんチンコ、お兄さんチンコ、おじいちゃんチンコ、弟チンコ、一樹チンコ
 と呼ぶことにしましょう。
「っと、尿意を催してしまいました」
 朝ですからね。寝ている間に溜まるのは自然です。
 僕はトイレに赴きました。

「ブ、ブルスコォ!」
 ま、まさか五本すべてから尿が放たれるとは!
 予想ガイでした。放尿時間も五分の一に短縮です。
「モルスァ……意外に便利かもしれませんね」
 トランクスにお父さんと一樹が収まりませんが。
 ブルブル振れば眺めは爽快。
 あ、それ。ぺちんぺちん。
「何やってるんでしょうか、僕」
 とにかく誰かに相談しましょう。
 
「キョンターン!」
「キモっ!?」
 あ、血液が……?
「シュペルエタンダァール!? モッコリモリモリシーカーハリケーン!」
 ぬおおおお!
 説明しよう!
 急激に血液が下腹部に集中したことにより、上半身の血液が減退。
 僕は一時的なブラックアウトを引き起こしたのです! 


 私は長門有希。
 朝起きたらケツ毛が異常に伸びていた。

「バーガー……」
 このままでは下着を身に着けられない。
 剃る。剃る。剃る。
 生えてくる。生えてくる。生えてくる。
「……ロッテリアーン」
 どうやら無限に増殖するようだ。
 しかし一定以上の長さには伸びない。唯一の希望だろう。
 だからといってこのままではこの星この国の憲法に違反してしまう。
 猥褻物陳列罪だっただろうか。確かそれだ。

「一毛打尽にする」
 上手いこと言いながら私は、チャッカメンを手に取った。
 ケツ毛にサラダ油をしみこませ、一気に点火。
 ファイアー。
「あちっ、あつっ」
 ボボボボボボーボボーボボ!
「長門さん! 何やってんの!」
 涼子はんが手からウルトラ水流を発射した。
「やめて。趣味じゃない」
「おばか!」
 消化されてしまった。しかし毛は燃えた。 
 毛は燃えたがお尻の対熱皮膚装甲がこげた。
 こんがりだ。
 しかも燃やし尽くしたというのにまた生えてきた。
「……モスバーガーン」
「強く生きようね。私は味方だからね」
 笑いながら言われても説得力がない。


 あたしの名前は涼宮ハルヒ!
 朝起きたら右手が細木数子になっていた!

「ずばりいうわよ!」
「うるさい!」
「あんたそんなガキっぽい下着つけてたら男にもてないわよ!」
「だまれクソババァ!」
 やかましいったらありゃしない。
 しかい待ちに待った不思議現象なので悪い気はしない。
 けどムカツクので、犬の糞に右手をつっこんだ。
「ずばりいうわよ!」
「なによ」
「けっこう美味しいわよ!」
「うそつけ」
「あんたスカトロ趣味なんてマトモな男いないわよ!」
「だまれクソババァ!」
 文字通りクソまみれ。
 あたしの右手だけど、キニシナイ。
 けれどまぁ、臭いので洗うことにした。
「じゅばびびびぶぶううぶぶ」
「何言ってるかわかんないわ」
「ぼぼぼぼじゅごじゅびじゅば」
「あんだって」
「ぶはっ! アンタあたしはエビアンしか飲まないのよ!」
「知るかクソババァ!」
 結構楽しかった。 


 あたしの名前はやっぱり涼宮ハルヒ!
 朝起きたら左手がキョンになっていた……え? ちょ、タイム!

「……どういうことだ」
「あたしにも分からないわよ」
 随分ちっさいキョンはこの世の終わりみたいな顔をしている。
 気持ちは分かるけど、あたしにもどうなってるかさっぱり分からない。
「……長門に相談してみよう」
「有希? どうして?」
「なんとかしてくれそうだろ」
 それもそうねぇ、と納得する。
 あたしはパジャマから制服に着替えるために……って、
「こら、振り回すな……!」
 あたしはおへそを全開にしたところでハッとした。
「あんたこそ見ないでよ! えろキョン!」
「見れるか! 三半規管がどうかなりそうだ……」
 青白い顔のキョン。
 ……うーん、どうしよう。
 とにかく右手だけで着替えましょう。
「左手はなるべく動かさないから、目つぶってて」
「わかったよ……」
 げんなりしてキョンは溜め息をついた。
 
「……どうした?」
「おしっこしたい」
「は?」
「だからおしっこしたい」
「……俺が元に戻るまで、」
「我慢できない」

「いい、分かった?」
「あぁ」
「ほんとーに、分かった?」
「……このティッシュで作った耳栓して、上から手で耳を塞いで、目はテープで止めて。
 それでお前の小便の音やらを聞かず見ぬすればいいんだろ。分かってるよ」
 げんなりして肩をすくめたキョンがくっついた左手を振り回した。
「……なに、す、てめ」
「ばかばかばか! デリカシーって言葉知らないの!」
「ちょ、ま……じ」
「変態! バカ! しね! あほ!」
 そうやって羞恥だか怒りやらでぶんぶん振り回しているうちに、
「……」
「あ」
 キョンは青ざめた顔で気絶してしまった。
 どどど、どうしよう。
 いえ、ううん。ここはとにかく今のうちにお花を摘んでおくのよ!
「ふうぃー」
 ちょろちょろりーんと。
 何とか上手く切り抜けれたわ。
 がらがらとトイレットペーパーを巻き取り、あとは拭くだけ――って、
「ああああああああああっ!?」
 左手で
 やって
 しまった
「……ん、んん?」
「わぁ! ばか! こんなタイミングで起きるな!」
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by kyon-haru | 2005-05-12 23:29

アナル超闘志列伝古泉

 アナル超闘志列伝古泉

 偶然前後ろの席になった美人な涼宮と良い感じに談笑してるときだった。
 休み時間。がらっと扉をあけて入って来たそいつは、全裸だった。
 ……警察に通報かな。
 ハルヒの眼を手で覆いつつそんな事をかんがえていたら、
 そいつはあろうことか俺の近くにやって来て、こう叫んだ。

古泉「ないんだったら作ればいいんです!」
古泉「……何をだ」
古泉「アナル部よっ!」

 とりあえず俺はソイツを椅子で思いっきり殴った。
 血が噴水みたいで面白いー!
 とハルヒが上機嫌だ。いやぁ、よかったよかった。


 アナル超闘志列伝古泉2

 良い感じに付き合うことになったハルヒとデートしているときだった。
 夕方の公園でチューなんぞに励んでいたら、
 何時ぞやのソイツが突然草陰から飛びだした。全裸で。

古泉「キョン君、お話することがあります」
古泉「……なんだ」
古泉「私は、全宇宙のアナルを統合する肛門菊門統合体によって作られたアンドロイドなんです」
古泉「……保留で良いですか?」
古泉「本当の年齢だけは禁則事項です!」

 とりあえず俺は蓋を開けてない缶ジュースを思い切り投げつけた。
 この痛みがすんばらしぃぃぃぃっ!
 と叫びつつ、ソイツは噴水のように血を噴出しながら倒れた。
 わき腹にトーキックを連発しているハルヒは楽しそうだった。いや、よかった。


 くそみそアナル紳士古泉

 素晴らしい感じに俺の家でハルヒとペッティングなんぞかましていたその時だ。
 キョンの部屋に入ったときから私こんなになっちゃってたの……、と
 致死量的に可愛いハルヒのその向こう。二階の窓。
 なんとなく来るんじゃないかなぁ、と思っていたらソイツはやって来た。
 窓をぶち破り、全裸の体中に切り傷を作りながら。

古泉「貴方を殺して涼宮ハルヒの出方をみr

 言いきらないうちに、俺はソイツを窓から放り投げた。

古泉「無駄無駄ぁっ! この空間は僕の情報せいぎゅぐぶるぅわっ!?」

 アスファルトに激突して色々ぶちまけるソイツ。
 胸を手ぶらで隠し、泣きながら鉄アレイなんぞ投擲して
 ソイツのドタマをかち割るハルヒは楽しそうだった。いや、よかった。 
 

 アナル王古泉のドリチン合唱際

 ラブが激しくて学校のトイレの個室の便座に座った俺の目の前で、
 制服をはだけさせたハルヒが
 誰か来るかも、って思っただけで私こんなに……ねぇ、キョン……
 なんぞ囁きつつ下着を下ろしたその時だ。
 隣の個室からソイツの叫びが聞こえてきた。

古泉「い、い、いつきの、きんたまんまん!」
古泉「い、い、いつきの、きんたまんまん!」
古泉「揉むだけでこの快感っ! こいつはスゲェーッ!」

 俺と般若のような顔をしたハルヒはバリケードを構築してソイツを閉じ込めると、
 上から水をかけたり、その辺の物を投げ入れたり、など色々したが

古泉「い、い、いつきの、きんたまぁんっ! まぁんっ!」

 叫び声は大きくなるばかりなので、
 窓を密封したのちサンポールを危険配合させてトイレを出て、扉も密封した。
 まだまだネタはあるが疲れてきたと、ハルヒは泣いた。
 泣き顔にキスをした。とたん機嫌を直したハルヒは可愛かった。いや、よかった。
 

 ホップアナップ古泉くん

 ロマンスのジャーニーの末、ついに俺の腰の上にまたがったハルヒが、
 いっぱい出してくれてありがと、キョン……
 なんぞ背筋がぞくぞくしそうな顔で微笑んだ時だ。
 貸し出しのバスマットとローションを手に従業員に成りすましソイツは来た。
 チンコにリボンを巻いて。

古泉「どうかなっ! めがっさ似合ってると思わないかいっ!?」

 ぴこぴこぴこ。
 ラッキー君だにょろよー。

 あふぅん、なんてハルヒの喘ぎ声をバックに息子さんを引き抜いた俺は、
 ハルヒが痴漢撃退用に持っていたスタンガンの出力を最大にして、
 ソイツのきんたまんまんに押し当てた。

古泉「しびれるぅ! あこがれるぅ!」

 尿道から黒煙を噴出しつつ、ソイツは倒れた。
 無表情でソイツの頭を電話機でガンガン殴るハルヒは楽しそうだった。
 脳漿ぶちまけろ! 本当に楽しそうだ。
 いや、良かった良かった。 


 アナルの使い魔

古泉「良い感じにキョンタンの家でキョンタンとビューティフルドリーマーしていたその時だ」
古泉「お前のマッガーレ半端ねぇよ、勘弁してくれ……、と」
古泉「キョンタンがアナルから白濁液をたらしながら懇願していたそのアナル」
古泉「ぶりり! というハードロックと共にソイツは飛び出した。黒くてかりながら」
古泉「それが僕のマッガーレです」

看守「うるぜーそ! このソチンカスが!」


古泉「誠にもうしわけゴザーセン」


 超人変態古泉マン

 放課後の部室で二人きり。
 コスプレしたいけど指怪我して着替えれないの……
 だから、キョンが着せて? 好きなの着せて良いから……
 と妖艶に微笑むハルヒでリアル着せ替え人形ごっこなんぞをやってたその時だ。
 ガタガタと掃除用具箱が超振動し、ソイツが中から飛び出した。
 全裸にめがねだけを装着して。

古泉「めがねは無い方が可愛いと思うぞ……」
古泉「俺、アナル属性しか無いし」
古泉「アナル属性?」
古泉「忘れるな。大事なことだ」

 俺とハルヒはパイプ椅子でソイツを滅多殴りにした。
 指を怪我してる割にはハードアタッカーなハルヒの顔は輝いていた。負の光で。
 あらゆる穴から血を流しながら、

古泉「マッガーレの再構成を……」

 などと呟くソイツにハルヒが熱湯をぶっかけてトドメを刺した。
 めちゃめちゃ楽しそうだな、ハルヒ。いや、良かった良かった。


看守「脱獄アーッ!?」


 ガチャピンと古泉の開けアナッルッルー

 ハルヒの頭の上にチンコを置いてちょんまげなんぞやってたその時だ。
 おれの頭の上に生暖かい感触が襲ってきた。

古泉「ちょんまげ!」

 今日も世界は平和だ。








谷口「ちょんまげ!」


 アナル淑女長門

 偶然二人きりになった部室で朝比奈さんと良い感じに談笑していたその時だ。
 彼氏居ないんですか? 居ないです。でも好きな人なら居ますぅ。
 頬を染めて俯いてしまった朝比奈さんのちらちらという視線。その後ろ。
 部室の扉をばぁんとあけて、開脚前転しながらソイツは飛び込んできた。
 全裸で。股の合間で禁則事項が光っていた。

古泉「長門さんを期待した貴方なんかオシオキですよ! パピ、ヨン!」
古泉「全裸なのは宇宙人対策よ。いつ気づいたの?」

 気がつきたくもない。と俺はソイツを掃除道具箱に閉じ込めた。
 ホースで水をかけっぱなしにしたり、金属バットでガンガンガンガン。
 
古泉「********したら******はしんじゃ*****アアァァァ****らめぇ」

 未来の光線銃を乱射する朝比奈さんは可憐だった。
 いや、癒されるなぁ。

ハルヒ「浮気は死刑なんだからっ!」

 逃げろ!


 古泉危機一髪

 私は糞変態野郎を呼び出した。服を着て来いというメモつきで。
 何本目かのセーラムライトを吸い潰したその時だった。
 雨の校舎裏。人気も人の眼も何も無いところに、ソイツはのこのこやって来た。

古泉「朝比奈さん、いったいどんな御用ですか」
古泉「あと全裸は僕たちの機関の正装なんですよまったくアナルアナル!」

 酷く頭のイカレタことを言いながら、ソイツは何故か憤慨しているようだった。
 腰をくねくねさせている。気持悪い。吐き気がする。
 懐に忍ばせた未来式高周波振動ナイフの重みを感じながら、
 私は新たなセーラムライトに火をつけた。

みくる「一本吸う間だけ時間をやる。命乞いをしろ」

古泉「ワット? 意味不明ですモンモランシー!」

 驚いているソイツにお構いなしに、私は煙草を吸う。
 ナノコーディングされた肺はいくら吸っても発ガンしない。汚れることもない。
 ニコチンが良い具合に頭に回るのを感じながら、右手でナイフの柄を握った。
 振動スイッチを入れる。

古泉「こ、この音は! バイブですね! ズバリ! いやっほう!」 

みくる「続くわけがないだろう」

 一方そのころ長門有希は自宅でカップラーメンを食っていた。


 無題

 俺とハルヒは同じ大学に進学し、卒業と同時に結婚した。
 俺はどうして在学中に書いた小説が新人賞にひっかかり小説家に、
 ハルヒは大手の製薬メーカーの研究職につき、ガンやパーキンソンやエイズの特効薬を作るのだと意気込んでいる。
 クリスマス。雪が降るホワイトクリスマスその時だった。
 リーガロイヤルホテルを予約していた俺たちは梅田の街を幸せ一杯で歩いていた。
 賑やかな喧騒と恋人たちに溢れる街。その片隅にソイツは居た。

古泉「……ぼ、ぼぼぼぼ僕はあぁぁ、あな、あなっる星のお、おおっ、おうじぃ……」

 全裸で。体中に怪我を負い、寒さに震えながら、廃人のような顔で。
 煙草の吸殻やゴミに紛れながら、ソイツはまだ夢の中に居た。

古泉「あ、あぁぁぁぁ、き、ききききょんさささ、さあさあああ……」

 俺はソイツに近づいていた。ハルヒは嫌がったが、渋々ついてきた。
 首にまいていたマフラーをソイツに巻いてやる。ぽんと肩を叩き、腹に力を込めてこう言った。

キョン「現実に帰ろう」





古泉「というドリームを見ましたフヒヒ!」 


 46サンチ古泉砲

 良い感じにハルヒにホルスタインと何をしてたのと問い詰められていたその時だ。
 ホルスタインってあんまりじゃないか――といえばボディブロー。
 話しをしていただけで愛してるのはお前だけだよ、といえばうっとりとしてキス。
 何だか最近投下してないヤンデレみたいだな、と思ったその矢先。地面の中からソイツは飛び出した。
 勿論全裸で。もぐらかよテメェは。

古泉「遅い! 罰金!」
古泉「あんたみくるちゃんに何したのよ!」
古泉「あんた有希に何したのよ!」
古泉「……でもアタシにだったら何しても良いわy

 いい終わらぬうちに、ソイツはバールみたいなもので頭蓋を破壊された。
 ハルヒ。いくらなんでもそれは、と言おうとして止めた。
 脳漿と血飛沫に塗れたハルヒは楽しそうだったし、
 ソイツは明日になればどんな傷でも治っているだろうから。
 いや、良かった。 


 アナル掘りと少年

 良い感じにエロスな夢から覚めたその時だ。
 痛いくらいにいきりたっていた俺のハープーンに感じる柔らかい感触。
 扇情的な顔をしたハルヒの下がいやらしく絡まっていた。
 ……キョンが寝てる間に練習しようと思ったのにぃ
 脳髄が蕩けそうな俺は全裸だった。
 どこでもドアから出てきたそいつも全裸だった。

古泉「また一緒にハッテン場に……」

 俺が動くその前に、どこでもドアの向こうから青い狸が出てきて、
 ソイツに空気砲を滅多くそに撃ち込んだ。
 血反吐を吐き散らしつつ、ソイツは狸に連れられてドアに消えた。
 いきなり繰り広げられたSF変態活劇をお構い無しに、
 ハルヒは行為を続けていた。
 どうやら慣れたらしい。いや、良かった。
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by kyon-haru | 2005-05-12 23:26

あなたが安心して道を渡れるように

 基本的に俺は善人である。反論させん。
 だからして、信号の無い横断歩道を横断できずに困っているおばあさんを見かけたら、
「一緒に渡りますよ。おばあさん」
 そんな風に優しく声をかけて一緒に渡ってあげるのは当たり前だ。
 小学生のように片手をかかげ、おばあさんの荷物を片手にゆっくりと歩く。
「すいませんねぇ、ありがとう」
「いいんですよ。これくらい」
「ううん。ほんとうにありがとうね」
 年のころは70台……いや、60台かもしれない。随分とかわいらしいおばあさんだった。

 お礼に是非お茶でもどうですかとせがまれて、断れるはずがない。
 おばあさんには何か用事があるんじゃないか?
 と少し気がかりはあったものの、多分用事は終えての帰り道なんだろう、と勝手に納得。
「ここはあたしの二つ目の故郷みたいなところでねぇ」
「ということは、今は違う場所に住んでられるんですか?」
 おばあさんはホットティーを、俺はアイスティーを飲みつつ談笑する。
「うん。そうだね。とっても遠いところだね……」
 その遠いところがどこか聞いてはいけないような気がした。だから聞かなかった。
 そんなおばあさんの、どこか寂しい表情だった。

 ――そうして気がつけば、俺はおばあさんと散歩をしていた。
 たまにはこういうのも悪くない。むしろ気持ち良いくらいだ。と思う。
 川沿いの桜並木を歩いて、公園へ。ゆっくりと歩いて、ベンチで休憩することにした。   
「……何か飲みますか? 買ってきますよ」
「いいや。もう十分。……今日はほんとうにどうもありがとうね、キョンくん」
 腰を浮かしたところで、そのまま固まる。
 懐かしむような、尊い聖歌を歌うような声音だった。
「……どうして、俺の渾名を知って、」
 いるんですか、と続けられなかった。いや、続けなかった。
 その舌足らずな響き。それに俺は酷く心当たりがあったから。

「……」
 腰を下ろす。心なしか鼓動が早くなっているような気がした。
 おばあさんは、落ち着いて喋りだす。
「……最後に貴方に会えて、本当に良かった」
「さいご、って」
 俺の問いには答えずに、
「あたしは頼りないただのお嬢ちゃんだけど、優しくしてくれて本当にありがとうね」
 かわいらしいおばあさんは可愛らしく、天使のように微笑み、

「皆によろしくね。キョンくん、たくさんごめんね。たくさんありがとう――それと、」

 朝比奈みくるは、貴方のことが好きでした

「……っ」
 目を開けていられないほどの風が吹いた。
 季節外れのつむじ風――それに紛れるように、
「……」
 俺の隣から人の気配が消えていた。
 それから辺りが暗くなるまで、俺はただ空を見上げ、ずっとベンチに座っていた。



「あの、朝比奈さん?」
「どうしたの、キョンくん」
 翌週の、最初の部活の日。
 俺は彼女が着替え終わるのを待って、退室してきたところで声をかけた。

「今度の休み、俺とデートしてくれませんか?」

 はじまりと終わりのあの公園に、行きましょう。
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by kyon-haru | 2005-05-12 21:11