「よっ、はっ」
古典的な掛け声をあげながらレースゲームに集中する古泉。
ボードゲームの腕もあれだが、テレビゲームの腕もあれだった。
今のところ俺の全戦全勝である。一人用で練習させたが結果は変わらない。
「なぁ、古泉よ」
画面を見つめたまま、声をかけた。
古泉にしては珍しく、切迫した返事がくる。こんなもんで切迫すな。
「は、はい。何でしょう?」
「カーブを曲がるときにな、体は傾けなくて良いと思うぞ」
「すいません、つい……」
と恥しそうに俯く古泉の運転する亀の大王は八位。俺の運転する緑の恐竜は一位。
何度やっても変わらぬ結果に妹とも対戦させてみたが、
「古泉よ」
「な、なんでしょう」
「ゲームの中だから良いけどな、現実世界じゃ逆走は絶対ダメだからな」
わーい、やったー!
という妹の歓声を尻目に、古泉は終わらぬ二周目を走行中である。
……これも一種の才能かね。やれやれ。