「いっでええええ!」
「やっぱあんた肝臓悪いわねー」
ということでしばらくお酒無しね、とにこにこ顔で俺の足裏のツボを指圧する我妻。
俺のほうも妻の足裏のツボマッサをしているのだが、どこを刺激してもむにむにするだけで一向に堪えない。
愛妻が健康体なのは非常に喜ばしいことだが、この痛みしばらく忘れられない!
ていうか肝臓が悪いんじゃなくてただ単にお前が怪力なだけなんじゃないか。
「へー、ほー、そういうこというんだ」
「ああああ、いいい、だだだだだ、いだぁ!」
足の裏に穴開くって!
ごめんごめんタップタップと床をばんばんして、ようやく開放される。
「ぜー、ふはー」
「だらしないわねー。泣くんじゃないわよ」
「……ぐすん」
これが辱められた気分なのだろうか。
息も絶え絶えに恨みがましい視線を向けても、妻は俺を見つめて向日葵のような笑顔だ。
その勝ち誇った笑みに、男としての原初のプライドをえらく刺激された俺は、
「こちょこちょこちょ」
「きゃ、や、ばか、きゃは、あはははは!」
マッサでは敵わないということでくすぐり攻撃にうってでるわけだが、
「こちょこちょこ、ちょ――」
「ちょ、もう、あは、バカ、やめ……ん? どったの?」
短いスカートで足をばたばた暴れるもんだから、下着が、
「黒か」
「あほー!」
こそばしていた方とは逆の足裏が視界いっぱいに広がるのをスローで眺めつつ、
お酒禁止はいったい何時まで続くのかなー、とワリと真剣に悩むのだった。