ライトが不調な時点で嫌な予感ひしひしだったのだが、案の定「無灯火の上に二人乗りとは許さんダァッー!」という風にやけにはりきってるおまわりさんとヒートでデッドなチャリ・チェイスを繰り広げた。C級ハリウッド映画みたいなアホ展開にこんなもん注意されて終わりなんだから大人しく停車しておけば良かったと後悔してももう遅すぎて、何でそうしなかったかと問われれば後ろに跨っている朝倉が「いっちゃえー!」などと終始ご機嫌だったためである。相変わらず流されやすい性格の俺だった。まぁ撒いたしよしとしよう。
という具合にいろいろ疲れてたどり着いた自宅の前には庶民の住宅街に不釣合いなリンカーンが王者のように鎮座し、その隣には愛媛みかんのダンボール箱。
ホームレスだとか捨て猫だとかを想像した君たち、惜しい。いや惜しくない。全くもって惜しくない。誰がホームレスやねん。この人はそれはもう立派な人なんだぞ。
「……新川さん」
取っ手の変わりに開いている穴にむかって声をかけてみる。
自転車から降りた俺たち二人を観察したような雰囲気が流れ、鶴屋家の運転手兼執事さんは「良いセンスだ」と何時ものようによく分からない決め台詞と共に立ち上がり、
「おかえりなさいませ。みなさん家の中にいらっしゃいます。何でも急にあなたが消えてしまったとかで先ほどまでてんやわんやの大騒ぎでした」
「消えた? 俺が?」
「ええ。まるでステルス迷彩でも使ったかのような消えっぷりだったと」
「はぁ……」
「まぁ、消えた方法は今となっては瑣末なことですな。こうして無事戻ってこられた。それ以下のことは多々あっても、それ以上のことはそう多くない」
しゅぼ、という音は葉巻に火をつけた音だろう。頭から胸まで被さったダンボールがなければダンディこの上ないというのに、ほんとに不思議な趣味の人である。穴から上る煙がシュール。
俺としては消えた記憶はないのだが、今日一日の記憶全体が曖昧だし、朝倉みたいなのが居るんだから神隠しくらいあってもおかしくないか。新川さんも言うように、こうやって無事に帰宅できたんだし良しとしよう。
ところでステルスなんちゃらって何ですか。
「禁則事項だよ。ライデン」
「俺キョンっす」
「後ろのお嬢さんはローズだね」
「こいつは朝倉です」
「私はここでレーションを食べていますので、早く顔を見せてあげてください。お嬢様にも、皆さんにも」
食欲を持て余す……とかなんとか言って、新川さんはダンボールの中で「うまぁすぎる!」という叫びを上げた。毎度のことだが重要な話題以外だとまったく会話がかみ合わない。
それでも根っこはとても丁寧で礼儀正しくてしっかりしてる良い人なのだが、朝倉は新川さんと初見なワケで、
「ね、ねぇ、この人、楽しくなるお薬……」
「シャラップ!」
もがふー! と俺に口をふさがれるのだった。
ばかやろあほやろう! ジュードーの達人に滅多なこと言うもんじゃありません!
いそいそと朝倉を引きずって退散する。夜空の下、月光を粛々と浴びるダンボールはやはりとってもダンディだった。……ということにしておこう。
………………
…………
……
「ギョンぐぅぅぅん!」
「ギョンぐぅぅぅぅぅぅん!」
手を洗ってうがいを済まし部屋に戻る。待ち受けていたのは涙と鼻水で顔をぐしゅぐしゅにさせた我が姉とみくるだった。
心配じだんだよう、とおいおい泣きながら二人して抱きついてくるもんだから床に押し倒されるわけで、こ、古泉とか鶴屋とかによによしてないで助けてくれ。姉ちゃんはともかくみくるが! みくるの反則ボディが!
「それは出来ない相談ですね。こんな可愛いお二人をここまで心配させたんですよ?」
「ほんとほんっと。キョンくんは罪作りな男さねっ」
痛いところ付いてくる二人だが、胸を撫で下ろしているあたりどうやら心配させてしまったのは同じなようだ。消えたくて消えたんじゃないし、その原理もさっぱりなのだが、……あぁ俺が悪かったよったく。
「悪かった。悪かったってば」
ほらほら、と俺の半身ずつを占領してる二人に声をかける。
そっと肩に手を添え体を持ち上げて離れてくれと催促するのだが、まるで今離れたら二度と会えない今生の別れかというように二人は尚一層力をこめて抱きしめてきて、――ふぐっえぐっと人の服に鼻水すりつけまくりである。誰が洗濯すると思ってんだお前ら。
「おでえぢゃんをひどりにじないでよぅ……」
いや自分にはハルヒコさんもシャミセンも居るじゃねえかという空気読めない発言は幾らなんでもしないが、もう気が済むまで二人の好きなようにさせとこうと観念して鼻水地獄を受け入れつつみくるはともかく実姉に密着されたからといってむにゅむにゅワッホイだけは何としてもしてはならんと全身に渇をいれつつ、ハルヒコといえば涼宮はどうしたんだと首を上げて室内を見回してみるば、
「うっそー! あんたウチの生徒だったの。何年? クラスは? いっそのことウチのクラス来なさいよ!」
「そうさせてもらおうと思ってね、さっき学校に行って来たの。明日から学友よ」
「わかってるわねあんた! えらい、えらいわ。うんうん。やっぱりあたしには不思議なモノを見つけるレーダーか何かついてるに違いないわね」
朝倉とやんややんやと大盛り上がりしていた。てかさらっと重大なことを言わなかったか朝倉……それよりも、何故だろうか。涼宮に酷いことされたような気がする。具体的にいうなら側頭部にごっつい硬いもんを投げつけられたような。
……気のせいか。そうだよな。こいつはずっと家に居た……はずだし。その見事なポニーテールを見ていると全部許してしまいそうになるぜ。駄目なヤツとか言うな。文句があんならかかってこい。武器はなしでな。
妄想谷口と脳内でガチのステゴロバトルを繰り広げていると、みくるがやっとこさ気分が落ち着いてきたのか鼻をすんすんとすすり、むっくりとみっともない面を上げて至近距離で俺を見つめ、
「……もうどこにも行かないでね」
握っていた服をさらに力をこめて握りながら――なんとも返答に困ることを祈るように呟く。
そんな遊園地で迷子になった幼子みたいな顔で真面目に言われてもだな、俺だって進学やら就職やらで遠いのか近いのか定かじゃない未来ではるが何時かはお前とお隣同士じゃ無くなるときが、
ときが……、
「あー、うー、えー……ちょっと待てよ」
……マジかよ。
自分に驚愕する。
常識的に考えて人の縁には別れが確実について回るものだ。
だというのに、みくる相手にそれが来る――という事が全く欠片も想像さえできなくて、自分のあんまりにも貧困な想像力に唸るしかなかった。
だってだな、物心ついたときにはもう傍に居たんだ。互いの家のブラザー四人集まってよく遊んだ。ままごとで誰が嫁をするかで殴りあいの喧嘩をしていた三人を若干引き気味に見守りながら、結局決まってズタボロにされて観葉植物の役やペットのマントヒヒの役をやらされながら泣いていたみくるの姿に――ちびな俺は無邪気にとんでもない事を言ったような気がする。
それが原因かどうかは知らないが、みくるはとてとてと何をするにも俺の後をついて来て、男の友達と遊んでるところにまで無謀にも突撃して結局生来の運動オンチがたたってボロッカスになっても――あぁ、ちびのみくるも無邪気にとんでもない事を言ったような気がする。
それやこれやが原因なんだろう。異性とコミュケイトする事がおっかなびっくり恥ずかしいな年頃になっても俺たちの関係は変わらず、神の悪戯か同じクラスであり続けて今に至る。
……はて。俺はなぜに幼少時代の回想に耽っているんだろう。
想像力の話だったはずだ。みくるが隣に居ない生活が想像できないと、そういう事。
もしも、すら考えられない。比翼の鳥とまでは言わないが、それはつまり二人でワンセットで在る事が当たり前という認識が強すぎるからであり、
「なんてこった」
腕を顔に持ってくることが叶わないので目だけを閉じて嘆息する。
待てよの言葉を律儀にも守ってくれていたみくるは「どうしたの?」と怪訝そうに小さく呟くがその声音には不安とか恐怖とかマイナス方向の感情が篭っていて、そんなに俺と離れ離れになることが嫌なのか。目を開けて見つめる。そのしょんぼりした顔が期待する返答に及ぶかどうかは自信もへったくれもないが、俺が言えるのはだな、と適切な言葉を頭の辞書から検索しつつしどろもどろに前置きをして、
「これっぽっちも想像できねぇ……」
結局は素直に心情を吐露することに決めた。
何を想像できないのという疑問の視線を受け止めて、あーこんな大人数に聞かせる話じゃないなぁ……みくるにだけ聞こえるように、と俺は声のボリュームを絞り、声帯が震える頃になってその台詞の恥ずかしさに気がついてそっぽを向いて、言った。
「……またねじゃなくてさようならを言う日が来ることがだよ」
「っ、!」
はあぅっ、と息を飲む音と、熱したフライパンに水をぶっかけたような音がした。気配と感触だけでみくるの顔面が俺の胸板に鼻が潰れるくらいに押し付けられたと分かる。
「……」
うわぁ、もう。何やってんだよ俺。
本当に今更だけど、マジのマジにマジで俺は何をしているんだろうか?
姉ちゃんと幼馴染にだきつかれて地面に押し倒されてその二人にえぐえぐ泣かれた上に、馴染みの方にプロポーズと間違われそうな台詞を真剣に言ってしまっている。そして他の面子と言えば微笑ましく俺たちの様子を見守ったり、勝手に盛り上がったり。
カオスだ。この上なくカオスカオスカオス。
ちくしょうと誰にでもなく悪態をつく。明日から今は表情が見えないみくるとどんな顔して接すれば良いんだ。誰か教えに来い。誰でも良い。ええい谷口じゃなくてもっと女心の分かるヤツ!
「はぁ、ふぅ」
深呼吸をする。混沌に流されてはいけない。冷静に、クールになろう。主観的ではなく客観的に物事を見定めるんだ。素数を数えよう。いちさんごななじゅういち……。
「うが……」
よし、よし。良い感じだ。落ち着いて着たぞ。数学に弱い頭でよかった。じゅうさんあたりで頭痛がしてきてちょうど良い具合に思考回路が冷やされたのだ。それはそれでどうなんだ俺。ま、今は別にんなことどうでも良い。
……そういやどんな顔といえば長門はどうしているだろうか。別に今まで忘れていたわけじゃないぞ? うむ。基本的に自分から騒ぐようなヤツじゃないから、こういう場面じゃきっと顔を真っ赤にしてふるふる震えて恥ずかしそうにしてるはずだ。
ギネスオブザ恥ずかしがりやの姿を探して視線をめぐらせると、
「あれ?」
いねえ。室内の何処にも居ない。トイレにでも行ってるのだろうか。
おい、みくる。呼びかけるとのっそり頭が上がる。うへぇ、お前なんて顔してやがる。泣くのか笑うのかどっちかにしろ……じゃなくてだな、長門が居ないけどもう帰ったのか?
「え? あ、長門さんは……」
そこまで言い、みくるは桜色の唇をもごもごとさせて視線を彷徨わせた。知ってはいるけど話し辛いという様子だ。まさかトイレはトイレでもでっかい方だとか言うオチか――と、若干失礼な事を考えていると、
「有希りんは帰ったよ」
「なんだって?」
鶴屋の若干沈んだ声が間に入ってきた。散々びーすか号泣して人を抱き枕にしといてからに、みくるが慌てて俺から距離を取る。いつもなら茹蛸なみくるにニヤニヤするはずの鶴屋はしかし自称親友に軽い一瞥をくれただけでいかにも重たそうな息を吐き、
「覚えてないの、キョンくん?」
「何をだ?」
「ええと、有希りんがキョンくんにしたこと……」
「俺は長門に何かされたのか?」
クエスチョンマークを連続使用させるような事を言い辛そうに、けれど肺を絞るようにして暗い面持ちで言う。
そんな鶴屋の初めて見るネガティブブルーな様相に不安と疑問が急激に募っていく。
長門が俺に何をした? 俺は何かをされた? だがちょいと待って欲しい。俺が長門に何かして長門が帰ってしまうのなら納得がいくが、その逆だと言われても腑に落ちない。そしてそのしっくりこなさが、長門の身に善くない事が起きたのだという嫌な妄想を駆り立てる。
「あ、いや待てよ。分かった」
「思い出したの? じゃ、じゃあキョンくん有希りんのこと……」
「あー違う。何されたかは知らん。けど、つまりだな」
俺があんな歯の浮く台詞をはいた所為でみくるとどんな顔して会えば良いかを悩んだように、いや今はもうすっかり普通に面つき合わしているが、ともかく長門も何か普段ならしないような事を思わずしちまって、その所為で俺と顔を会わせられなくて帰った、とそういう事か?
前半部分をばっさりカットして伝えると、鶴屋の隣で所在無さげにしていた古泉が憂いを含んだ微笑で顎に手を添えて、
「ほぼ正解ですね。長門さんは自分がした事に自分で驚き、そして後悔なさって、とてもじゃないが貴方と顔を会わせられないと――そう言い残して帰宅されました」
「そりゃまた……」
難儀というか長門らしいと言うか。
どうせ俺に何かしたっつっても、本人が過剰に気にしてるだけで実際はそれ程大したことじゃないに違いない。覚えてない俺が言うのも何だが、ここは一つ電話して気にしてないだとか怒ってないだとか一言声をかけてやるべきだろう。そしてそれで丸く収まるはずだ。
「ん……」
――それにしちゃあ三人の様子がおかしいなと、携帯を取り出したところで気がつく。
順繰りに顔を見回してみる。どいつもこいつも揃って時化た表情だ。だがそれは友人を心配しているという、好ましい部類に入るモノでもある。それにしては顔にかかる射線の量が半端ないのが気になるが、その理由はというと、
「えっとね、キョンくん。長門さんを怒らないであげてね? ……その、キョンくんと涼宮さんが…………してるのを見て、長門さんは百科事典でキョンくんの顎を、」
こう、ばかーん、って。
手振りを交えて説明するみくる。――そういや顎が痛いなぁと思ってたけど、マジで?
にわかには信じられない。あの長門が? ガンジーとまでは言わないが、自分の血を吸ってる蚊でさえ「いっしょうけんめい生きてね」と見逃してしまいそうな長門が?
涼宮にチューされたという唇じゃなくて顎をさすってみる。骨の髄あたりでじんじんというほのかな痛み。まさか、と目を見開く俺に二人は自分がやった事のように申し訳無さそうな顔つきをこしらえ、
「それはもう見事な一撃だったさね。キョンくんが思わず気絶しちゃうくらいにね」
「それで気絶した貴方を私たちでベッドに寝かせましてね……そこでもう長門さんは自責の念に押しつぶされそうな様子でしたが、患部を冷やした方が良いと思い氷嚢を作って、あぁすみません、勝手に冷蔵庫を開けさせてもらいました」
「話の腰を折るな。一々律儀なヤツだな。冷蔵庫くらい別にどうでも良いさ」
「ありがとうございます。……そして氷嚢を手に部屋に戻りましたら、貴方の姿が消えていまして」
その不可思議現象に驚く数名、喜ぶ一人、そして、
「気を取り戻した貴方が怒りのあまり家を飛び出していったのだと長門さんは思われたのでしょうね。宥める私たちの言う事など聞こえていないという様子で、貴方の体温が残るベッドに幾度も謝罪を述べられて、――もう二度と会えない、会ってはいけない、そういった意味の言葉を呟かれた長門さんはふらふらと幽霊のような足取りで帰宅されたのです」
「……」
言葉が出ない。いや……言いたいことはある。
もう痛みもないし、そもそも記憶にないし、別に怒ってない。気にする必要はない。たまにはそれくらいはっちゃけた方が良い――だとか。
しかしそれは眼前の三人に言うべき言葉ではないし、そんな危なっかしい様子の長門を一人にした事を怒るのは流石に筋違いだし、そうしたくてしたワケでは無いが、忽然と姿を消しちまった俺にも原因があることだし、あー、うー……あー、もう、まったく、なんつうか、その、やらずに後悔するよりやって後悔した方が良いと言うし、今の俺に出来ることと言える事はなんぞやと考えたら、
「みんなもう時間も時間だし、そろそろ帰れ。また明日学校でな。今日はありがとう。鶴屋は悪いけどみんなを送っていってやってくれ……涼宮っ、聞いてるのかこら」
「んあー? 何よ。あたしまだ朝倉と話足りないんだけど」
「電話番号でも何でも交換しろよ。話は明日でも出来るだろ。今日は親御さんも心配するだろうし、そろそろ帰れって」
「なんかあんた親父臭いこと言うのね。ま、正論だから何にも言わないけど。……あの長門って子、何とかしなさいよね」
他人の心配も出来るヤツなんだな。ま、あの人と同じ血が流れてるって事か。
「おう。任しとけ」と胸を叩く。うんうん頷きながら話を聞いていた三人のほっとした表情に、任せとけとは言ったもののそんなに頼れるヤツじゃ無いんだけどなぁ、俺……と弱気になりそうな心に活を入れて、最後に泣きつかれたのかうとうと床で寝かけていた姉ちゃんを抱き起こしてやる。
「ふぁ……キョンくん?」
「姉ちゃん。みんなが帰ったらちゃんと鍵かけとくんだぞ。チャイムが鳴っても開けたらダメだからな。風呂の中で寝るなよ? 寝るときはちゃんと着替えてベッドで寝ろよ? 夕飯は朝倉が作ってくれるらしいから、残さないでちゃんと食えよ?」
一つ一つ子供に言い聞かせるようにゆっくりと注意点を述べていく。何か室内の空気が一瞬で温くなったような気がするが、これは非常に大事なことなのだ。疎かにしたら本気で風呂で溺死しかねない。
姉ちゃんは「うん、うん。分かってるよー」と目を擦りながら元気に返事をしたが「はれ?」と首をかしげ、
「……キョンくん出かけるの?」
ぐしゅしゅっと顔を崩してしまった。
ど、どーしたもんか。涙の乾き跡が残る眦を指の腹で拭って遣りながら、コンビニだとか色々悩みに悩んで、結局は無難に「友達のところにちょっとな」と答える。
「……」
姉ちゃんは困り顔の俺を五秒十秒と見つめ、やおら真剣な表情を浮かべると、
「女の子のとこ?」
滅多に披露することのない女のカンをこんな時に限ってばしっと発動させた。
うぐっ、と言葉に詰まってしまった時点でもう負けである。最悪みくるの家に無理やり押し込むしかないなと思案を巡らせつつ、素直に「そうだ」と首肯すると、何故か姉ちゃんは突然にっぱーと満面の笑みを浮かべて俺の肩をばすんばすんと叩きまくり、
「頑張れ! 頑張れ! あ、でもちゃんと避妊するんだよ?」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
己以外の全員と部屋の空気を氷結させた。
高校一年生には、ちょっと、そのネタは……どうかと思うぞ、妙なところで大人なマイシスター?
………………
…………
……
ゆーびきりげーんまん、はーらませたら、でばぼーちょーで、ぶっーさす! ゆびきった!
「うがぁ!」
そもそもそんな事しねえよ!